2008年1月14日月曜日

コティ来襲

コティとはシンハラ語で「トラ」のことで、 スリランカ反政府組織「LTTE タミル・イラーム解放の虎」 の戦士をさす固有名詞。

どこかで自爆テロなどが起こると、みんな「コティがどーとか」と話をしているといったぐあい。

そんなコティが私のいまいる県事務所のオフィスに来襲するという騒ぎがあった。



先週の金曜日のこと。 いつものようにオフィスへ行き、フィールド調査のまとめをしていた私。

ここは県事務所なので、郡とか村のオフィサーなどの来客が多く、毎日けっこうざわざわしている。
しかもオフィスがあるのは県事務所の建物の1階。廊下の人通りも多い。

が、お昼の11時頃になって、急にみんなが小声になって真剣に話しつつ、窓の外の様子を気にしている。 外を見ると、いつのまにやら複数の警察官と軍人がうろうろしている。
「どうしたの?」と聞くと、オフィサーの1人が、こう答えてくれた。
「今、コティが4人でこの事務所へ来たらしく、2人は検問でひっかかって逃げたらしいのだけれど、あとの2人はこの建物内にいるらしいの。だから、もし知らない人物が部屋に入ってきたら、すぐに外の警官が軍人に伝えるようにって。で、洋服がどーとかで、爆弾がこーとかで…。」

…え? コティといえば、政府関係者などを狙って、洋服の中に隠した爆弾で自爆テロを起こす人たちのはず。 最後のほうは言葉が理解できなかったけど、爆弾を所持している可能性は大…!?
それに、この部屋、毎日かなりの人が出入りするけど、私には誰が知り合いで誰が違うか区別がつかない。

それからはもう、フィールド調査のまとめどころじゃない。
部屋の入り口に立つ人がいるたびに、はっとして、みんなの反応を見る。 そんで、知り合いとわかったら、ようやく安心する。 この繰り返し。
しかも私の席、ひとつしかない入り口のすぐ近く。

「ねえ、私ら、今ここでどうずればいいの?誰か教えて!!」 といいたい気持ちを抑え、みんなの動きを見るしかなく。

ところがどっこい、このオフィスの人たちときたら、 部屋に訪れてくる知り合いたちに対し、 「おまえ、コティか?コティじゃないな?!よし、入れ~!」 などと言って、笑っていたりする。
笑い事じゃないよ!?ねえ?!
それに、他の人たちは黙々と仕事をしたり、いつものようにぼーっと外を眺めていたり…。私にニコニコと「バヤイ?(怖い?)」と聞いてみたり。

このマイペースさというか、余裕というか、なんというか。

驚くしバヤイけれど、騒いでいられない。
そんなこんなで1時ごろになって、ようやくコティは実は全員、ゲートでひっかかって外に逃げ出していたことが判明。 その後、捕まったのか、街では警戒警報が出されていたらしいけど、それも私が家に帰るころには、何事もなかったかのよう。

この国で内戦とともに暮らす人たちは、慣れているようでもあるけれど、ある人はこう言っていた。

「死ぬときは、爆弾だろうが交通事故だろうがなんだろうが、いつか死ぬのだから、テロとか関係ないんだよ。」 そういう運命だったと思うしかないということらしい。

この人に限らず、きっと多くの人がそうして割り切るほかないのだろう。 こんな人たちと暮らしていて、初めのころは正直怖くて仕方がなかった私だけれど、割り切るというか、慣れるというか、わからないけれど恐怖が少なくなってきた。
この人はここで暮らしている。今までも、これからも。
その事実が今の私を支えているように思う。

最近またテロの危険性が高まっていて、今日から10日間ほど、JICAから任地外への移動禁止令が発令されている。 そのことを話すと、スリランカ人は「何だそれ、俺たちはふつうに移動してるぞ」って顔をする。

日本人の感覚で自分の身をしっかり守りつつ、彼らとも共存していくとき、理解できない壁があるかもしれないけれど、それでもここでうまく暮らしていきたいと思う。 平和であることって、やっぱり素晴らしい。
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